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ウィリアム・クライン 『ABC』

f:id:ichiro_s:20130528013904j:plainウィリアム・クラインのABCを紹介します。

 ウィリアム・クラインは非常に多才な人で著名な写真家であるだけでなく、映画、絵画の世界でも広く知れ渡っています。所謂鬼才と言っても良いでしょう。

 

彼は広角レンズ(28mm)を愛用し、被写体に一歩も二歩も踏み込み、大胆な構図で写真を切りとります。無作為で大胆な構図、人々が偶然見せた表情や視線、広角ならではの奥行きのある立体感とダイナミズム。これらが一枚の写真に収まり、誰でも撮れそうでクラインにしか撮れない独特の世界感を生み出します。

 

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彼の初期の代表作「ニューヨーク」では実験的手法が多く使われ、それまでの写真の常識(ピントは合わせるべき、手ぶれはしない方が良い)に捕らわれない大胆な手法と構図で写真を切りとっています。これが彼の独特な写真から感じ取られるライブ感に繋がります。後に森山大道を有名にした彼の「アレ・ぶれ・ボケ」スタイルはクラインからの影響によるものだという話もあります。

 

クラインはファッション誌のフォトグラファーとして活躍していたこともあり、造形や配置、被写体のチョイスなどにも彼独自センスやユーモアが強く反映されるのが特徴です。拘りは作品集作りにも及び、作品を並べるだけで無く写真の配置や大きさ、順番に非常に細かな指示が出ていたという話もあります。 

今回ご紹介する「ABC」は、彼のベスト盤とも言うべき内容で、クライン本人が写真をチョイスし、自身が編集にも携わって作られた力作です。

代表的な写真が収められているだけで無く、彼自身がデザインしたポスターや監督した映画の撮影シーン、コンタクトシートにペイントをコラージュしたアート作品など盛りだくさんで、この一冊だけでも十分クラインワールドを楽しめる内容になっています。

 

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普通に写真を観るだけではどうしても面白くないと感じている方、自身の写真観を広げたいと思っている方、森山大道がどうしても苦手な方(笑)にオススメしたい作品です。

 

William ABC

William ABC

 

↓こちらは初期の名作「New York」のオリジナル(再版)。「ABC」にもこちらから多くチョイスされています。いつか欲しいのですが、この値段ではちょっと手が出ません^^

 

New York 1954/55

New York 1954/55