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森山大道 『NORTHERN 3 - 光と影のハイマート』

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実は私、写真は撮ることと同じくらい観ることが好きなんです。そして、よさげな作品集を発見すると、ついポチッとやってしまう悪い癖もあったりします。写真作品を言葉で説明するのは無粋ではありますが、普段あまりプロの写真家が生み出す作品に触れていない方や、作品集を買ってみたいけど何を選べば良いか判らないなんていう方の参考になればと思い、気まぐれに独断と偏見にまみれた作品集評を書いてみようと思います。


記念すべき一回目は森山大道氏の”NORTHERN 3”です。デジタルカメラで北海道の大地を撮ったこのシリーズ、第三段はデジタルで撮ってモノクロ化するという手法がとられています。 森山大道の写真と言えば、モノクロフィルムを増感したハイコントラストなモノクロ写真が有名ですが、この作品でもそのトーンは健在です。


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自分の印象としての森山大道の写真は、時に鳥肌が立つような鋭いキャプチャ、目が離せない大胆な構図と、そこに在るものを際立たせる強烈な質感を強く感じます。また、いわゆるストレートフォトグラフィー派の写真家はあまり用いないボケやブレを表現手法として取り入れているところも特徴だと言えます。音楽で例えるならば、レコードをサンプリングしたフレーズにリズムマシンの音を重ねた、80年代のヒップホップのような荒さ、ローファイな中に垣間見えるザラっとした質感の格好良さがあります。


この作品ですが、一貫して寂しげで退廃的な印象を受けました。モノクロのトーンもさることながら、被写体の選択、構図の作り方、全てそれを意図している様にも感じます。北の大地を覆う色味の薄い曇り空、市街中心地から少し離れただけで顔を出す過疎化と老朽化、そこに確かに存在する生の営みを、一枚ずつ丁寧且つ大胆にあぶり出しています。


”森山大道テイスト”を知るにはとても良い参考書になるのではないでしょうか。


森山大道NORTHERN〈3〉光と影のハイマート

森山大道NORTHERN〈3〉光と影のハイマート


プロの凄い写真を観ると最初は絶望感を味わいますが、少し経つと「今度はあんな風に撮ってみよう」という写欲に繋がりますね。